自走榴弾砲 ヴェスペ 
"Wespe" GeschuetzwagenⅡ
fuer 10.5cm le.F.H.18/2(Sf.)
製作(1)  Model making(1)
■実車解説
 後方火力支援用として開発された10.5cm軽榴弾砲18型(10.5cm le.F.H.18(Leichte Feldhaubitze 18))の車載化のため、Ⅱ号戦車F型を元にして開発された自走砲です。
 1942年7月に開発が決定され、1943年2月から1944年6月までに676両が生産されました。(この他に容易に自走砲に改装できる弾薬運搬車が159両生産されています。)
 なお、生産途中において次のとおり、仕様が変更されました。
○1943年5・6月生産分から
 右側のボッシュ製ライトが廃止
○1943年5・6月生産分から
 第1・2転輪用のバンブストップ(ゴムダンパー)をコイル式スプリングに変更してサスペンションを強化
○1943年11月生産分から
 第5転輪用のバンブストップ(ゴムダンパー)がコイル式スプリングに変更
○1944年春頃生産分から
 履帯連結ピン戻し板の新設。
 履帯の連結ピンの片方の端には小さな穴が開けられ、履板を連結した際にワッシャーを取り付けてから脱落防止ピンが打ち込まれていました。しかし、何らかの理由でその脱落防止ピンが欠損すると連結ピンが履帯内側(車体側)に飛び出して連結が外れるので、その連結ピンを押し戻す板(Track pin return plate)が誘導輪上部に装着されるようになりました。これは、本車のみではなく、ティーガーなどの他のドイツ戦車でもその追加装備が1944年春頃の生産分から確認できます。 (注:アハパンを含め、古い資料では履帯の連結ピンが車体に接触して車体側面を傷つけないための措置と解説していましたが、誤りなのでここで訂正させていただきます。)
 本車の初戦はクルスク戦とされ、多くの装甲師団に配備されました。

■使用キット kit
 タミヤのキット(35200)を発売当時(1996年)に購入し、アハパンのイラスト作画の参考資料として仮組みしていたものを再利用しました。

  また、静岡ホビーショーで限定販売していたグレーの成形品も手元にあったので、これも利用することにしました。

■現存車両の考察
 公開されている5台の車体の車台(生産)番号を示す資料が見当たらないので、外観的な特徴から生産順に紹介します。(他にも1台あるようですが非公開のため、不明)
○ドイツの車体
 アメリカ軍に鹵獲されて、戦後は陸軍兵器博物館(アバディーン(Aberdeen)戦車博物館)に屋外展示されていましたが、ドイツに返還されてコブレンツ(koblenz)軍事博物館に展示後、現在はムンスター(Munster)のドイツ戦車博物館に移されています。
※この車体についてThomas Jenz氏は「Military Ordnance Special Number 18"Wespe"」の中で、車台番号31059の車体ではないかと推測しています。
 なお、この車体は標準仕様とは異なる箇所が次のとおり多くあるので、模型製作時に参考する場合は注意が必要です。
・車体前部の牽引フック
 オリジナルではなく米軍が牽引用に溶接留めしたものです。
・砲身先端のマズルブレーキ(砲口制退器)
 鹵獲当初は装着されていましたが、アバディーンでの展示中に失われていました。ドイツに返還後、大がかりなレストアが行われた際に、マズルブレーキが装着されましたが、この車体が当初装着されていた18M型用のものではなく、ヴェスペのプロトタイプが付けていた18/40M型用のものが取り付けられています。
・駐退器と揺架の先端カバー
 プロトタイプと同様に先端が尖った形状のものになっています。
・フェンダー上面の滑り止めパターン
 ヴェスペではⅢ号戦車と同じドットパターンが一般的ですが、この車体ではドイツへ返還された当初はⅡ号戦車と同じ菱目模様の板が取り付けられていましたが、レストアによりドットパターンのものに新調されています。
・フェンダー前部のマッドフラップ
 一般的なヴェスペにはないⅡ号戦車F型と同じマッドフラップが鹵獲時には両側ともに装着されていました。しかし、アバディーン時代では左側のみとなり、返還時にはそれも無くなり、レストア時にはⅠ号戦車のような形状のものが両側に取り付けられています。
▼参考動画
 Wespe:A Successful Failure?(12分42秒  ドイツ語解説(日本語字幕設定可))

  https://www.youtube.com/watch?v=Nh61yx0w0lI
○ロシアの車体
 ソ連軍に鹵獲された後、クビンカ(Kubinka)戦車博物館に展示されていましたが、現在はパトリオットパーク(Patriot park)に移されています。クビンカ時代はマズルブレーキや車外装備品が取り外されていましたが、現在はそれらが不完全ですが再現され、稼働状態まで修復されています。
▼参考動画
 Реставрация САУ «Wespe» (6分54秒 ロシア語解説)

         https://www.youtube.com/watch?v=9ZhWG3Wjjgs&t=2s
○ベルギーの車体
 ベッカーコレクション(Abdre Becker collection)では2台保有していることが以前から確認されていますが、未だに修復されていません。しかし、オリジナルのままなので、逆に当時の状態が分かり貴重です。
○フランスの車体
 「パンツァーズ・アット・ソミュールNo.3」(大日本絵画 1992)で、ソミュール(Saumur)戦車博物館に保存されていたことが知られるようになりました。現存車両の中では一番後期に生産された車体になります。
▼参考動画
 Walkaround - Saumur Tank Museum(4分13秒)

  https://www.youtube.com/watch?v=zc6OBSVCQ3k

■模型設定
 製作する2台のうち、1台はコブレンツの初期生産型を、もう1台はソミュールの後期生産型の車体を参考にすることにし、2台並べて違いを楽しむことにしました。
 なお、所属部隊は特に考慮せず、古いキットなので、省略されている部品を自作又はアフターパーツを利用して可能な限り再現することに力を入れることにしました。(次回に続く)

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