38(t)戦車 D型
Pz.Kpfw.38(t) Ausf.D

 製作  Model making 
■使用キット kit
 トライスター(現ホビーボス)のB型キットをD型に改造しました。
 (2020年10月完成。以下、キットの表記はこのキットを示します。) 
▼Pz.kpfw.38(t) Ausf.B(Tristar/Hobby Boss)


■実車解説と模型設定

 第4生産シリーズのD型はC型生産途中から行われた車台前面装甲板の強化とターレットリングガードの装備が当初より装備され、さらに生産途中から標準型(軽量型)履帯が採用され、アンテナ基部がチェコ製からドイツ製に変更しています。
 生産は1940年9月から始まり、11月までに105両が製造されています。
 製作する車両は、38(t)戦車が配備されている主な装甲師団(7,8,12,19,20,22)の中から第12装甲師団(第29戦車連隊)を選択し、1941年のバルバロッサ作戦時としました。

■B/C型への改造
 キットはB型なので、D型にするためには本来のB型への修正とC型に改造する必要があります。
 B型への修正記事はこちらを参照
 C型への改造記事はこちらを参照

 ■C型とD型の相違点
●ターレットリングガードの追加
 C型生産途中から砲塔基部を火器などから保護するため、保護用リング(ターレットリングガード)が戦闘室上部にボルト留めされました。38(t)戦車ではC/D型及びS型用のもの(小)と砲塔側面装甲板が厚くなったE/F型及びG型のもの(大)の大小2種類が確認でき、旧型車両でも工場での修理において追加装備されていたようです。
 さて、このターレットリングガード(小)のパーツはドラゴンのS型(6435)のみであり、これを流用するとS型が作れないので、プラ板で自作しました。プラ板は1ミリ厚の柔らかいエバーグリーンのプレーン(9040)で、直径約40ミリの輪をオルファのコンパスカッター(57B)で切り抜きました。このコンパスカッターは本来薄い紙などをカットする用途のものですが、プラ板は一度に切り取ろうとしないで、刃先で何度もけがいて溝を徐々に深くしていけば、1ミリ程度まできれいにカットできます。
▼ドラゴンのS型の戦闘室上面パーツ(C3)

▼トライスターのE/F型(G型)の戦闘室上面パーツ(A1)と自作パーツとの比較

 このターレットリングガードの細部はスロバキアのSNP(スロバキア民衆蜂起)博物館の現存車両(B型?)を参考にして行い、既存ボルト部分を避けて切り欠けているので、その形状を再現しました。(実車写真はグランドパワー1999年9月号などに収録され、パルチザン博物館の車両として紹介)
●前面装甲板のボルト
 C型とD型では取付ボルトの位置が僅かに変更されています。

  作例ではキットの成形上、この部分のボルトのモールドが歪んでいるので、この修正に合わせてドラゴンの38(t)戦車の不用パーツからボルトを移植しました。
●ドイツ製アンテナ基部
 D型生産途中からアンテナ基部が既存のチェコ製からドイツのアンテナ基部1型(Antenenfuß 1)に変更されています。

  作例ではトライスターのE/F型のアンテナ基部パーツにボルトなどを加えてディテールアップし、車体への取付部を平らに削ってから取り付けました。
●標準型(軽量型)履帯
 D型生産途中からセンターガイド部分が肉抜きされた軽量化履帯が使用され、これが標準型として定着しました。なお、作例ではA~C型と同様にマスタークラブの初期型履帯にしています。

■第12装甲師団への仕様変更
 この師団に所属する第29戦車連隊(3個大隊編成)は1941年1月に新設され、初陣となる6月のバルバロッサ作戦への参加に向けて十分な準備期間があったことから、独自な改造や装備品を加えており、それを再現しました。
 なお、作例ではD型ベースですが、E/F型ベースの車両も存在し応用できますので、よろしければ工作の参考にしてください。
 また、パッションモデルの「E/F型用エッチングセット(タミヤ用)」(P35-152)には十分ではないものの、この師団の仕様に改造するためのパーツがいくつか含まれており、これを利用すると手軽に改造できます。(以下「パッションモデル」と略します。)

●転 輪
 左右の第3転輪に乗員の乗降補助用(足掛け)と考えられる金属製リングを取り付けていることが確認できます。

 パッションモデルにはそのパーツが付属していますが、転輪への接着強度に不安があったのでプラ製とし、不要パーツの中から外径5.5ミリ程の円筒パーツを探し出し、その内側を薄く削って転輪に接着しました。なお、ウェーブのプラパイプ(グレー・外径5.5ミリ・肉薄)があれば、そのまま輪切りにして使用できると思います。
●履帯防滑具収納箱
 ジャッキを上部に取り付けていないので、B型の作例と同様に真鍮板でフタを作って上部を塞ぎました。

 なお、パッションモデルには、このフタのパーツが用意されています。
●ジャッキ
 ドイツ戦車のように単独でフェンダーに立てて装着されているので、写真を参考にしてキットのパーツ形状を修正し、アベールのエッチングパーツなどでディテールアップしました。



●雑具箱
 写真のように3つの雑具箱が装備されており、フタの留め具が側面に付いているのが特徴です。

 作例ではキットのパーツ(F3〜F8)を元にして写真を見ながら改造しました。
●ショベル
 ドイツ戦車のようにショベルの刃先保護用のホルダーが確認できるので、プラ板で自作しました。

●発煙弾発射機
 この3連装の発煙弾発射機(Nebelkerzen Wurfgeräte)は第100,第101戦車大隊(火炎放射)所属のⅡ号火炎放射戦車やⅡ号戦車での装備がよく知られていますが、38(t)戦車への装備は第12装甲師団のみ確認されており、同じ師団所属のⅡ号戦車でも装備例が確認できます。(装備のない車両もある)
 発射機は上方約45度の角度で設置され、点火は機械式で、発煙弾を火薬量により100メートルから最大500メートルまで射出できるようです。

 発煙弾はNb.K.S(Nebelkerze Schnell:速効性発煙弾)で、通常の発煙弾(Nb.K.39)より早く煙幕を張ることができ、100~200秒間燃焼します。(発煙弾本体の直径90mm、長さ140mm、重量1.7kg)

 トライスターのB型キットにはこのプラパーツ(C29~C32)が付属していますが、防水・防塵カバーはありません。また、パッションモデルには発煙弾発射機の真鍮製の挽き物パーツ6本と曲げ加工済みカバーが含まれています。

 作例ではトライスターとパッションモデルのパーツをニコイチにして組み立てました。 (写真ではカバー用ヒンジのパーツが未接着)
●ジェリカン
 機関室上部には第7装甲師団と同様に携行燃料缶(ジェリカン)4本が積載されており、その受け皿は木製で、革ベルトにより固定していることが確認できます。(例外あり)

 ジェリカンはタミヤの「ドイツ初期型ジェリカンセット」(35315)を利用し、受け皿は0.5ミリ厚のプラ板、革ベルトはパッションモデルのパーツ(写真では未接着)を利用しました。

■車外装備品の装着状況(車体左側)
▼戦場記録写真を確認したところ、バックミラーは取り外され、斧、バール、ツルハシ、ハンマーは車体側面にタグロープ取付用の金具の革ベルトにより装着されているようです。

 タグロープ取付用金具はグリフォン、斧のクランプはアベールのエッチングパーツを使用しました。
※各パーツは撮影用に仮留めしているだけなので、実際のものとは異なります。
▼記録写真を参考にして左フェンダーには前から順に履帯防滑具(グローサー)収納箱、雑具箱(中)、ショベル、発煙弾発射機を取り付けました。 


■車外装備品の装着状況(車体右側)
▼記録写真を参考に右フェンダーには前から順にジャッキ台、予備履帯、雑具箱(大)、雑具箱(小)、ジャッキ、そして最後部に発煙弾発射機を取り付けました。


  なお、ワイヤーカッターの取付位置は不明なため、作例では取り付けませんでした。

■車体後部
●車間表示灯、尾灯
 このD型では記録写真から車間表示灯は左、尾灯は右側に取り付けました。 (後部反射板は紛失防止のため、この時点では未接着)
●マフラーの排気管
 排気管は本来は上方に向けられていますが、この師団の車両は故意に後方に向けられており、この措置は発煙弾への影響を考慮したものと考えられます。

 作例でもそのように向きを変えてみました。
●牽引ピントルフック
 1941年5月30日付けにて陸軍総司令部から35(t)と38(t)戦車に200リットル入りドラム缶搭載のトレーラーを牽引できるようにピントルフックの取り付けが指示されました。これは予定されていたロシア侵攻において燃料補給が困難になることが予想された為の措置だったようです。
 燃料であるガソリンの輸送は鉄道と車両により行っていましたが、2本のレール幅を示す軌間(ゲージ)がドイツなど多くのヨーロッパ諸国が標準軌(新幹線と同じ1,435mm幅)であったのに対し、ソ連邦では広軌(1,520mm幅)を採用していたため、途中で荷物を積みかえるか、鉄道工兵部隊により軌道変換する必要があり、それが補給を遅らせる要因になっていました。また、ロシアの多くの土壌は保水力が高い黒土(チェルノーゼム)であるため、わずかな降雨でも泥濘化(ぬかるみか)して劣悪な路面状況になり、装輪トラックによる輸送が困難になることが予想されていました。
 安定した燃料補給を期待しないで侵攻するためには、このトレーラーが必要であり、敵対した時には戦闘機が燃料タンクを切り離すように、車内からのワイヤー操作によりトレーラーを切り離すことができました。
 トライスターのE/F型ではこのピントルフックのパーツ(C29,C30,C31)が含まれているので、作例ではこれを流用し、切り離し用ワイヤーのガイドパイプがマフラー中央上部に溶接留めされているので、プラ棒とプラ板で自作して取り付けました。なお、この他に燃料用ホースなどもありますが、見られない車両があるので作例では省略しました。 

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