タミヤの38(t)戦車を考証に基づき作ってみた(その6)

38(t)戦車F型 
Pz.Kpfw. 38(t) Ausf.F

製作(6)  Model making(6) 
■機関室上面 Engine Deck
●排気口金網 Wire mesh for engine air exhaust opening

 エンジンから発する暖気を排出する排気口には異物の混入防止のため、金網が取り付けられており、キットでもエッチングパーツが付属しています。
 各社から様々な金網パーツが発売されているので、比較してみました。
▼金網パーツの比較

①DRAGON
②Tristar
③TAMIYA
④ABER(35200)
⑤⑥VOYAGER MODEL(PE35143)
⑦GRIFFON MODEL(L35009)
⑧Passion Models(P35-152)
 見てのとおり、いろいろあって選択に迷うので、実車の記録写真で確認してみました。
083▼実車の金網

▲意外と編み目が細かいことが分かります。編み目が粗いパーツがあるのは初心者が塗装時に塗料で目を詰まらせることを防ぐためのようです。
▼私は個人的な好みとしてアベールのパーツを選択しましたが、そのままではタミヤのパーツとはフィットしないので、パテ埋めしたり、ボルトを削り取ったりしました。

▼アベールのパーツを取り付けた後に、ボルトをドラゴンのキットから移植して所定の位置に接着しました。

●機関室ハッチ Maintenance access hatch
 実車ではハッチは上方に開く構造になっており、そのハッチが閉じた状態で振動で開かないように四角ボルトにより固定されていますが、キットではリベットにしか見えません。
▼キットの機関室ハッチパーツ

▼実車の機関室ハッチの固定用四角ボルト

▼そこで少しオーバースケールですが、プラストラクトの0.5ミリ×0.5ミリのプラ角棒でそれらしく再現してみました。

 
■車体後部の装備品の考察 Equipment of tail of hull  
 作例の対象車両である522号車の記録写真は前部と右側面を撮影した2枚の写真だけで、車体後部の詳細が分からないので、記録写真(PANZER TRACTSから画像引用)を参考にして考察のうえ、再現工作を進めることにしました。

▲記録写真(以下「前掲の記録写真」)は砲塔前部の前部装甲板取付ボルトが縦に4個確認できることからE/F型と識別でき、特徴ある雑具箱の形状とジャッキの装備位置から、作例と同じ第19装甲師団の所属車両と判断でき、砲塔番号と特徴的な字体から作例対象の522号車と同じ第5中隊所属車であることが分かります。
 それぞれの装備品について考察するため、次のとおり番号を振りました。
①車間表示灯、②尾灯 Convoy taillight
③マフラー Engine exhaust muffler 
④発煙筒ラック(取付金具)  Smoke candle rack 
⑤エンジン始動用クランク差込口保護カバー Protective caps for crank starter  guide
⑥履帯張度調整装置保護カバー  Protective caps for track adjustors
⑦牽引ピントルフック  Tow coupling

①車間表示灯、②尾灯  Convoy taillight
 実車ではE型から車体からフェンダー上に延びた新型支持架に変更されましたが、第19装甲師団の所属車両の多くはD型以前の支持架を取り付けていることが前掲の記録写真で確認できます。

▲作例では「T字型」のエッチングパーツで支持架を作り、車間表示灯と尾灯パーツと支持架の接合はアドラーズネストの「六角ボルトヘッドSSS」(ANE-0012)を用い、車体上面へはアドラーズネストの「リベットヘッドM」(ANE-0029)で固定し、電気コードは0.25ミリ径の銅線で再現して機関室内へ配線しました。

③マフラー Engine exhaust muffler
▼実車ではマフラーの取付金具(矢印)は装甲板の接合ボルトを利用しているので、作例ではグリフォンのエッチングパーツを用い、アドラーズネストの「リベットヘッドM(0.8mm径)」(ANE-0029)を用い、正しい位置に孔を開けて固定しました。

 マフラーパーツはグリレH型を製作していた時に各社パーツの比較をしていましたが、再度比較してみます。
▼マフラーパーツの比較

▲並べて比較すると長さ(横幅)や排気管のカーブ形状などに違いが見られました。
 記録写真や「PANZER TRACTS」の四図面で検証すると長さに関しては中段のトライスターのパーツが図面の寸法に近く、上段のドラゴンは短く、下段のタミヤは長いようです。
▼ついでに排気管カバーのパーツを比較しました。

▲形状も様々ですが、タミヤのパーツはスケールを間違えたのでは思うほど、小さいことが分かります。タミヤのキットはマフラーパーツが長いので、このカバーで全体のバランスをとっているようですが、マフラーパーツが長くなったのは、取材対象と思われるアバディーンのマーダーⅢのマフラーが一部欠損していて採寸ができなかったからだと勝手に推測しています。
 実車のマフラーは現代のように耐熱塗料が発達していなかったので錆やすく、当時のオリジナルパーツが完全に現代まで残っている例は少ないため、模型でも再現するには難しいようです。
 38(t)戦車の取材対象と推測されるクビンカの車両のマフラーはかなりオリジナルに近い形状で復元されていますが、タミヤのキットのパーツはクビンカの車両のマフラーを参考にするのではなく、同社のマーダーⅢ(35248)と同じ設計データを用いているようなので個人的には残念です。
▼作例ではタミヤのキットのマフラーパーツを約1ミリ切り詰めてプラ板で塞ぎ、車内からマフラーにつながる排気管はボリュームが足りないと感じたので、パテで太くし、排気管カバーはグリレK型の製作時に余っていたサイバーホビー(ドラゴン)のパーツ(D51)を流用しました。

▼排気管基部はプラ板でボリュームを増し、排気管の穴の縁を薄くして車体に取り付けました。


④発煙筒ラック Smoke candle rack
 実車ではマフラーを上部に移設したE型生産途中から装甲カバー付きの発煙筒ラックが装備されるようになりました。(発煙弾を射出するものではなく、5発の発煙筒を車内から点火させる構造のものなので、お間違えなく)
 前掲の記録写真では何らかの理由で発煙筒ラックは外されていますが、車体への取付金具が残されています。
 作例では、取付金具を薄くした以外は、キットのパーツをそのまま取り付けています。

⑤⑥保護カバー Protective caps
 実車ではE型から⑤履帯張度調整装置及び⑥エンジン始動用クランク差込口を泥や砂塵などから保護するためにカバーが設けられました。
 クビンカの車両などの現存車両では、このカバーが欠損していますが、前掲の記録写真ではカバーの装着が確認できます。
 トライスターとドラゴンのキットではカバーのパーツが付属していますが、タミヤのキットでは同社のマーダーⅢ(35248)を参考にしているようで、カバーのパーツが省略されています。(マーダーⅢ(r)でも実車ではカバーが標準装備です。)
▼タミヤのキットがカバーを外している状態だと想定するのであれば、考証的に誤りではないですが、作例では保護カバーを装備した状態にしたかったので、グリレK型の製作時に余っていたサイバーホビー(ドラゴン)のパーツ(B70,D29×2)を流用しました。

▲また、車体への留め具はアベールのパーツを取り付けてディテールアップしています。

⑦牽引ピントルフック Tow coupling
 1941年5月30日付けにて陸軍総司令部から35(t)と38(t)戦車に200リットル入りドラム缶搭載のトレーラーを牽引できるようにピントルフックの取り付けが指示されました。これは予定されていたロシア侵攻において燃料補給が困難になることが予想された為の措置だったようです。
 燃料であるガソリンの輸送は鉄道と車両(一部では航空機)により行っていましたが、2本のレール幅を示す軌間(ゲージ)がドイツなど多くのヨーロッパ諸国が標準軌(新幹線と同じ1,435mm幅)であったのに対し、ソ連邦では広軌(1,520mm幅)を採用していたため、途中で荷物を積みかえるか、鉄道工兵部隊により軌道変換する必要があり、それが補給を遅らせる要因になっていました。また、ロシアの多くの土壌は保水力が高い黒土(チェルノーゼム)であるため、わずかな降雨で泥濘化(ぬかるみか)して劣悪な路面状況になリ、装輪トラックによる輸送が困難になることが予想されていました。
 安定した燃料補給を期待しないで侵攻するためには、このトレーラーが必要であり、敵対した時には戦闘機が燃料タンクを切り離すように、車内からのワイヤー操作によりトレーラーを切り離すことができました。
▼燃料用トレーラーを牽引している様子(World War Photosより画像引用)

▲写真は1941年、バルバロッサ作戦時の第12装甲師団所属車両
 クビンカの車両(F型)は車体番号から生産時期が1941年5月又は6月であったことから取り付けが間に合わなかったようで、一般的なフックが装備されています。
 そのためかタミヤのキットも一般的なフックで再現していますが、前掲の記録写真では牽引ピントルフックの装備が確認できるので、それを再現することにしました。
▼大祖国戦争中央博物館(モスクワ)のF型ではピントルフックが装備されており、工作の参考になります。

▼38(t)戦車のキットではトライスターのE/F型ではこのフックパーツが付属しており、それらを参考にしてプラ板で自作しました。

 なお、作った後に気付いたのですが、ドラゴンのⅢ号戦車E/F型(6631)を製作した時の不要パーツ(B43,B44)が使えそうです。
 また、この他に燃料用ホースなどもありますが、取り外している車両があるので作例では省略しました。

■砲 塔 Turret
●車長用ハッチ Commanders hatch
▼タミヤのハッチパーツ(D28)のモールドに違和感があったので、各社のパーツと比較しました。

▲タミヤのパーツには他社にはない手すりのようなモールドがあり、それが違和感の原因でした。
 この理由を確認するためにクビンカの車両のハッチを確認しました。
▼クビンカの車両の車長用ハッチ(Walk-aroundより画像引用)

▲手すりが溶接留めされていますが、これはソ連軍が取り付けたと思われ、一般的なものではありません。
▼ハッチを開けて車長フィギュアを座らせれば、修正の必要はありません(笑)が、作例ではハッチを閉じた状態にしたいので、写真のように修正しました。


●側面下部リベット Rivet
▼リベットが省略されているので、見える範囲で3コだけドラゴンのキットのパーツから流用してリベットを追加しました。

▲ターレットリングガードでほとんど見えなくなりますので、この工程は省略してもよいでしょう。(笑)
 ちなみに、このリベットを正確に表現しているのはドラゴンのキットのみです。
 次回は車外装備品の工作に移ります。(続く)

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