38(t)戦車S型
Pz.Kpfw. 38(t) Ausf.S

製作  Model making 
■使用キット

 S型のキットは、ドラゴンのG型(6290)のバリエーションキットとして、TOM COCKLE氏とGARY EDMUNDSON氏の協力により2012年に発売されました。
 新規パーツは前部反射板(R1)、車台前部装甲板(R2)、操縦手用前部視察用バイザー(R3)、戦闘室前部装甲板(R4)の4つのパーツで構成されたRランナーとS型用の砲塔パーツ(C28)です。
 また、1941年のバルバロッサ作戦時に使用された燃料トレーラー(サイバーホビーの「Ⅳ号戦車E型 潜水戦車」(6402)から流用)が付属しています。 (以下、「キット」の表記はこのキットを示します。)

▼Pz.kpfw.38(t) Ausf.S mit Fuel Drum Trailer(DRAGON)


■実車解説
 スウェーデン軍がチェコのBMM社に対して1939年末に発注した90両の車両(TNH-Sv)をドイツ陸軍総司令部が一方的に契約を解約させて没収したものです。(S型はスウェーデン仕様を示す。)
 車体及び砲塔前部に15mm厚の増加装甲板をボルト留めして防御力の向上を図っていますが、戦闘室及び砲塔側面などの装甲板の厚さはD型以前のままでした。
S型 E/F型
車台前面 25mm+25mm 25mm+25mm
戦闘室前面 25mm+25mm 25mm+25mm
戦闘室側面 15mm 15mm+15mm
砲塔前面 25mm+25mm 25mm+25mm
砲塔側面 15mm 30mm
砲塔後面 15mm 25mm
砲塔上面 8mm 12mm
 当初は1940年に生産される予定でしたが、主砲はスウェーデン製の搭載を予定していたため、砲の供給調整により生産開始が遅れ、1941年5月から9月までに90両が製造されました。
 なお、F型と並行生産されたことから、マフラーの上部への移設や装甲カバー付き発煙筒ラックの装備、履帯調度調整装置等の保護カバーの装着などの仕様はF型と同じでした
 また、スウェーデン軍はBMM社からTNH-Sv試作車1両とライセンス生産権を購入し、それを母体にしたStrv m/41(Strvはスウェーデン語のStridsvagnの略で「戦車」を示す)を開発しました。

■模型設定
 製作するのは、次の本の表紙を飾った車両です。
▼Sergijevka October 16,1941(Capricon)

 この本はドイツ軍のタイフーン作戦(モスクワ侵攻)のうち、1941年10月16日に起きたT34との戦闘記録を写真や戦況図などで解説したもので、写真の車両は第19装甲師団の第5中隊所属と解説しています。しかし、タミヤのE/F型で製作した522号車とは雑具箱の形状や砲塔番号の字体が異なることから興味が湧き、この記録写真を元ネタにして再現することにしました。
 なお、これまで製作したトライスターやタミヤとは違うドラゴンのキットなので、組立説明書の誤りなど製作上の注意点などを私なりにまとめてみましたので、参考にしてください。

■足まわり
●履 帯
 キットのパーツは連結式のマジックトラックですが、作例ではモデルカステンの連結式可動履帯(SK-30)を用い、実車のカタログデータと同じ片側93枚を使用しました。(キットの組立説明書では96枚と表示)
●起動輪
 キットには2種類のパーツが付属し、作例では軽め穴が開いた初期型(A24とA25)を用いました。
 ちなみに後期型の起動輪(A3とA4)はマーダーⅢM型やグリレK型などで採用されており、戦車型では修理時における換装を除き、一般的ではありません。 

●誘導輪
 誘導輪の車軸パーツ(A14)が貧弱で折れそうなので、E型製作時に余ったトライスターのパーツ(E18)に換えました。

●懸架装置
 こちらも2種類のパーツの選択式ですが、作例ではスリット付きのA23を用いました。


■車台側面装甲板
●戦闘室側面
 S型では25mm厚1枚の装甲板ですが、キットのパーツ(E)はE/F型(6434)やG型(6290)のパーツと共通なので、戦闘室側面の装甲板は25mm厚+25mm厚を再現しています。そこで、戦闘室との接合部を薄くして、25mm厚装甲板らしくしてみました。
●車台側面
▼ドラゴンのキットの車台パーツ(E)の側面板にはリベットヘッドがモールドされています。

▼実車ではフラットに仕上げているので、リベットヘッドのモールドを削り取りました。 (完成するとほとんど見えませんが)


■フェンダー
 キットのフェンダーパーツ(B2とB4)は組立説明書(4)には車幅灯取付金具のモールドがあるように見えますが、キットのパーツ(以下「A」)にはそれがありません。
 そこで、思い出したのが、以前グリレH型(6470)の製作時に使用しなかったフェンダーパーツ(以下「B」)で、2つのパーツを並べて確認しました。

 グリレH型のパーツ(B)が組立説明書(4)のイラストと同じで車幅灯取付金具のモールドがあります。
 グリレH型とS型のフェンダーパーツ(B2とB4)は、いずれも同じランナー枠に配置されており、何らかの理由で金型改修又は金型の差し替えが行われたものの、組立説明書を修正していなかったからだと考えられます。
▼グリレH型のフェンダーパーツの方が正しいので、それを再現すべく、作例ではパーツ(A)のフェンダー上のリブのモールドの一部(矢印)を削り取りました。

 さらに①車幅灯取付金具をアベールのエッチングパーツで再現するとともに、前から2番目の②フェンダー支持架の取付金具がパーツ(A)では無くなっているので、在庫パーツから移植しました。

 なお、組立説明書(19)ではエッチングパーツ(MA54)の取付の有無が選択式ですが、S型での取付例が確認できないので、作例では取り付けていません。

■戦闘室上面
●ターレットリング・ガード
 実車のS型のターレットリング・ガードは砲塔の側面装甲厚に合わせたD型以前と同じものが取り付けられています。
 キットのパーツ(C3)は、ドラゴンのE/F型(6434)やG型(6290)のパーツと同じものかは確認できませんが、S型としてはうまく再現されています。
 しかし、実車では戦闘室上面板の取付ボルトの部分が切り欠けられているので、作例では切り欠けとボルトを再現しました。(矢印部分)


■砲 塔
 砲塔パーツはE/F型(6434)やG型(6290)とは別に、前部装甲板を接合する側板のボルト数が5個であったり、側面装甲板が薄く再現されたS型用に新規設計されたパーツ(C28)が同包されています。

 作例では照準孔の上部の③雨トイや機関銃の④照星をアベールのエッチングパーツにしたり、⑤手すりを0.3ミリ径の真鍮線に置き換えるなど、最小限のデイテールアップに止めました。

■車外装備品
⑥予備履帯
 第5中隊では増加装甲を兼ねた予備履帯が車体前部に取り付けられているので、作例ではモデルカステンの履帯(SK-30)で再現しました。
⑦操縦手用前部視察クラッペ
 組立説明書(14)では前部装甲板(R4)に取り付けるクラッペのパーツはB60と図示していますが、これはE型以降に採用されたクラッペで誤りです。せっかくS型用のパーツ(R3)が付属しているので、これを取り付けましょう。
⑧バックミラー
 この512号車は本来の位置にバックミラーが取り付けられていることが記録写真で確認できるので、キットのパーツ(T1)をそのまま接着しました。

⑨雑具箱
 記録写真では第19装甲師団独自の雑具箱とは異なる簡易的なものが取り付けられているので、プラ板でそれらしく自作しました。

⑩ジェリカン・ラック
 この512号車では第19装甲師団独自のジェリカン・ラックが左側に1個ではなく、2個装備されていることが記録写真で確認できるので、2個取り付けました。

 キットにはジェリカンが付属していないので、ドラゴンの在庫パーツを利用し、ラックはエッチングパーツを寄せ集めてラックを再現してみました。
●工具類
 組立説明書(17)ではバール、ハンマー、ツルハシ、ショベル、ジャッキは標準的な位置への接着が図示されていますが、作例では第19装甲師団所属車両で見られる位置にアベールのエッチングパーツのベルトを用いて取り付けました。
⑪ジャッキ台
 キットのパーツの出来が今1つだったので、タミヤの「ドイツ初期型ジェリカンセット」(35315)に付属していたパーツを流用し、フェンダーへの固定用蝶ネジはキットのパーツ(B69)を取り付けました。

⑫車間表示灯
 E型からこの支持架が新型に変更されているので、アベールのエッチングパーツを用い、アドラーズネストの「六角ボルトヘッドSS」(ANE-0011)で固定しました。
 なお、この支持架で、マフラー固定用金具と重なる部分については切り取って調整しました。

⑬尾 灯
 尾灯自体はトライスターのパーツを流用してプラ棒で厚みを加え、支持架はアベールのエッチングパーツを用い、アドラーズネストの「六角ボルトヘッドSS」(ANE-0011)で固定しました。

 なお、第19装甲師団所属車両の場合、右フェンダー後部に防滑具収納箱の装着により、この支持架は本来の位置には取り付けられないので、内側にずらして機関室上面板取付ボルトを利用して取り付けています。

▲作例では支持架をアドラーズネストの「リベットヘッドM」(ANE-0029)で機関室上面に固定し、電気コードは0.25mm径の銅線を用いて機関室まで引き込みました。
⑭暖気排気口
 組立説明書(13)では排気口にシャッターパーツ(MA24)を取り付けるように指示されていますが、これはG型から採用されたもので誤りなので取り付けず、アベールのエッチングパーツに変更し、ボルトヘッドを移植しました。

⑮マフラー
 ドラゴンのマフラーは他メーカーのパーツと比較して短いようです。

▼作例ではマフラー本体を1ミリ厚のプラ板で延長し、排気管基部にボリュームを加えるなどの修正を行いました。

⑯牽引フック
 このキットには燃料用トレーラーが付属していますが、その牽引フックは標準的なフックパーツ(B26又はB64)のみで、牽引ピントルフックではありません。本来ならば、牽引ピントルフックに修正すべきですが、S型の生産が1941年5月から始まり、6月のバルバロッサ作戦まで改造が間に合わなかったと解釈してキットのパーツ(B26)を利用し、アベールのエッチングパーツでディテールアップしました。 (クビンカのF型も5月又は6月生産車両なので、標準的な牽引フックを装備しています。)
⑰保護カバー
 履帯張度調整装置には保護カバーが装備されているのでパーツ(D29×2)を選択し、組立説明書(3)には図示されていませんが、エンジン始動用クランク差込口にはパーツ(B70)を取り付け、車体への留め具をアベールのパーツでディテールアップしました。
⑱予備履帯
 第19装甲師団所属車両は警笛の後方に予備履帯を装着しているので、モデルカステンの履板(SK-30)2枚を用い、アベールのエッチングパーツとアドラーズネストの「六角ボルトヘッドSSS」(ANE-0012)で取付金具を再現してフェンダーに取り付けました。

⑲ワイヤーカッター、斧
 第19装甲師団の所属車両では写真の位置に装着されているようなので、キットのパーツを利用し、アベールのエッチングパーツのクランプを取り付けました。
 なお、ドラゴンの斧パーツは柄が長いので、切断して短くしています。(工作終了)


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