考察雑記帳　　Study

車間表示灯の考察

○車間表示灯とは
　車両の車体後部に装備されている尾灯には走行灯、停止灯（ストップライト）などがあり、軍用車両にはこれらとは別に灯火管制下における車間表示灯があります。
　第二次大戦中のドイツ車両の車間表示灯はミュンヘンのノーファ・テヒニック有限会社（Nova-Technik GmbH）がドイツ国防軍と共同開発した防空・対敵用の灯火管制システムの一つで、ノテックライト（灯下管制型ライト）とこの車間表示灯で構成されています。
　このシステムは1939年6月に認可され、1940年の西方戦役から夜間行軍用に追加装備されています。

○車間表示灯（初期型）
▼最初に採用された車間表示灯（以下、「初期型」）の点灯時の写真(#1)を見てください。

▲上部の４つの蛍色の灯火が車間表示灯で、見え方で車間距離が判断できます。
・４つの窓から発する灯火が１つに見えた場合 　　車間距離35ｍ以上300ｍ以内（車間距離が遠い）
・２つに分かれて見えた場合 　　車間距離25ｍから35ｍ（適正な車間距離）
・１つにつながって見えた場合 　　車間距離25ｍ以内（近距離で追突の危険性が大）
　下部には２つのライトが配置され、左側の赤色は走行灯、右側の橙色が停止灯で、中間にはフラップが設けられて上部と下部のいずれかを選択できる仕組みになっています。
▼次の写真(#2)は消灯時を示したものです。

▲模型で色を再現する際の参考になると思いますが、消灯時は普段見慣れている車の尾灯と比較してもライトリフレクター（反射板）が無いため、大変暗いことが分かります。

○車間表示灯（後期型）
　ここからが今回の本題です。大戦途中から筒型の尾灯（以下「後期型」）が採用され、その色の再現が以前からモデラーの間で話題になっていました。
　ところが近年、ある程度の事が判明してきましたが、まだ知らない人が多いようなので、私の知る範囲で紹介したいと思います。
▼まずは、これらの写真(#3)を見てください。

▲2012年4月にEric George氏が投稿した写真で、「AFV Modeller No.65」でも掲載されており、マーダーⅢＭ型の後部に装備されていた後期型です。
　この写真から消灯時は黒く、点灯時は初期型と同様に蛍色であることが推測されます。

　しかし、このままでは車間表示の機能は無いため、部品の欠落が推測されます。
▼次に後期型の記録写真(#4)で確認してみます。


▲初期型と同様に４つの窓らしきものが確認でき、この筒型の尾灯が車間表示の機能を持つことが推測できます。
▼PANZER TRACTSのドイル氏の図面(#5)の中には４つの窓が描かれているものが確認できます。

▼次に最新考証に基づいて復元された車両の後期型の写真(#6)を見てください。

▲私の見解では４つの窓の中の色は鮮やかすぎであり、消灯時は暗緑色、点灯時は蛍色が本来の色だと思います。
　また、筒状の窓枠部分は車体と同色に塗装されていますが、大戦末期の塗装であれば、これも有かなと思いますが、記録写真などから窓枠部分は黒系統の色が本来の色と考えます。
　そのため、１／３５スケールの模型ではチューブ状のパーツは黒系統の色で塗装するのがよいと思います。
▼ちなみに、１／１６スケールのＲＣでは次のようなパーツ(#7)が通販されています。

▼最後にイレギュラーな復元の写真(#8)をご紹介します。

▲この後期型では４つの窓の他に中央にも窓が開口され、赤色であることから停止灯または走行灯と思われますが、どのような根拠に基づくものか私には分かりません。 とりあえず、このような例もあることをお知らせします。
▼最近、ヘッツァーのものと思しき筒形尾灯の実物の写真を目にしました。筒の内部に黒い遮光マスクが焼き付けてあるように見えますが、画像のソースが不明なのでこれが「正解」なのか判断がつかずにいます。(hn-nhさん 2020.3.29情報提供)


【出典】 著作権法第32条第1項に基づき、出所を明記して引用しました。
#1.「FineScale Modeler」"formation light on german armor?
#2.「Armorpax Forum」"Colors for the German Notek convoy light
#3. Eric George「Armorama」"Panzer tubular tail light(late) 
#4.　写真提供/高田裕久「グランドパワー02年9月号」マーダーⅢ対戦車自走砲(2)p.44,51
#5.「RC-Panzerketten-Forum」"Kolonnenleuchte 1:16"
#6.Jochen Vollert "KUBELWAGEN on all Frontlines"(tankograd Publising)p.60