考察雑記帳  Study

 ドイツ戦車の装備品を考察してみました

ワイヤーカッター Wire Cutters

  今回のお題はドイツ軍の「ワイヤーカッター」です。
 ドイツ戦車を製作されている方であれば、誰でもご存知の車載工具ですが、アハパンで誤った紹介をしていたので、お詫びと修正を兼ねて改めてご紹介します。

○実物の検証
▼こちらは無可動実銃などを販売されているシカゴレジメンタルスさんのご協力で、以前取材させていただいた実物(商品)です。

▼刃の部分は経年によりサビていますが、本来は黒染め加工がされていたと思われ、一部黒いところが確認できます。

▲刻印は「gyr 1942」と読め、メーカー名と製造年を表しています。
 なお、寸法の参考のために撮影時にメジャーを当てています。
▼刃の厚さが気になっていたので撮影してみました。

▲このようなアングルで撮影した写真を撮る人は少ないでしょうね。
▼余談ですが、ワイヤーカッターのドラゴン製パーツの刃の部分を薄くしてみたことがあります。

▲苦労したわりにほとんど気付いてもらえず、最近の工作ではスルーしています(笑)。
▼柄の部分は木質繊維を混入したベークライト製(芯は鉄)で剥げやキズ、退色が見られ、本来の色はもっと濃い色味なのかもしれません。

▲ベークライト製だと知らなかった20年前の小生は木製だと思い込んでイラストでは木目を描いていましたが、実物には木目はありません(反省)。
▼柄の端もベークライト製であることが分かりますが、本来の色ではなく何故か濃い色が塗られています。(少しはみ出して塗られていますが、実物でもはみ出して塗られているので、模型では気にしないくてもよいのでは思ってしまいます。)

▲モノクロの記録写真では黒っぽい色だったので、昔はゴム製などと紹介していました(大反省)。

○柄は何色?
 柄の部分は「赤みの強い茶で塗装しましょう」とアーマーなどの模型雑誌で時々紹介されていますが、これについて検証してみました。
 この色味についての原典は「STEINER」さんのホームページからの引用と思われます。
 しかし、注意したいのは、この「赤みをおびたこげ茶」はHPでの説明では柄全体ではなく柄の末端部であり、これを「柄全体が赤みを帯びたこげ茶」だと誤って紹介されていることです。
 ちなみにエーデルマンさんの「東部戦線的泥沼日記~WW2 German Military Collection」では柄(ハンドル)の端は「小豆色」と紹介されています。

○ベークライトとは
 ウィキペデアによると日本では住友ベークライト株式会社の登録商標名で、正式名はフェノール樹脂ですが、ここでは一般的にベークライトと表記します。
▼耐熱性と難燃性に優れ、小生は2枚の真鍮板等を直角にハンダ付けするための治具として使用しており、「ベークブロック」(カツミ)として鉄道模型専門店で販売されています。

▲これはベークライト本来の色だと思われ、確かに赤みを帯びたこげ茶で、これも塗装指南?の根拠だと思われます。(電子基板などもそうですね。)
 しかし、実際のワイヤーカッターの柄はベークライトに木質繊維を混入しているため、前掲の写真のとおり、もっと明るい色に見えます。
▼また、ベークライトには成型色が黒色のものがあり、参考までにシカゴレジメンタルスさんの短機関銃MP40(商品)を掲載します。

▲このグリップやMG34やMG42機関銃の銃床などがベークライト製であったことは銃マニアでは知られていますが、ベークライト製イコール「赤みをおびたこげ茶」とは簡単には言えないことが理解していただけると思います。
▼最後に当時の色がある程度残されていると思われる実物をご紹介します。

▲これもシカゴレジメンタルスさんの商品ですが、柄の色は多少参考になるかと思います。
 なお、刃の形状は一般的なものとは異なりますが、記録写真でも時々確認でき、ドラゴンやトライスターのⅠ号戦車に付属するパーツがこれでしたね。
 まとめるとワイヤーカッターの製造には複数のメーカーが関わっており、柄はベークライトに木質繊維が混入されたものが使用されているため、ベークライト本来の色とは限らないということです。
 そのため、あまり「赤みをおびたこげ茶」にこだわらなくてもいいのではと思い、小生は適当に塗装しています(笑)。くだらない話ですみません。
 ご意見、感想などがありましたら、掲示板にお願いします。(2020年7月24日掲載)

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