II号戦車 A,B型
Pz.Kpfw.II Ausf.A, B
製作(1)  Model making(1)
実車解説
 A型はII号戦車の最初の量産型で、増加試作型ではアルファベットの小文字(a,b,c)で表記されていましたが、量産型から大文字(A,B,C))で表記されるようになりました。
 1937年末から1938年5月までにA型は210両、B型は同年11月までに384両が生産されました。
 なお、A型とB型との相違点や生産中の変更箇所などについては模型製作記事の中で述べていきます。

現存車両の考察
 現在6台が各国に現存しているので、各車両の特徴を理解した上で記録写真では分からないデイテールアップ工作の参考にしました。
⚫︎フランスの車体
 ソミュール(Saumur)戦車博物館に保存展示されている車体で、元々は博物館のスクラップヤードに放置されていた砲兵観測車(Pz.Beob.Wg.II)がベースになっています。(復元前の写真は「アハトゥンク・パンツァー第7集」の131ページ下に5点掲載されており、誘導輪が失われていることが確認できます。)

Wikimedia commons /Matthias Holländer
 操縦手用前部クラッぺ及び乗員用ハッチの形状から、増加試作型のc型であることが識別でき、稼働状態まで修復されていますが、欠損した部品の復元品のいくつかは考証的に問題があるので模型製作において、そのまま参考にするには注意が必要です。
⚫︎ロシアの車体
 レニノ-スネギリ(Lenino-Snegiri) 軍事歴史博物館に屋外展示されている車体で、1995年にイストラ(Istra)湖から発見された車体を2010年に復元したものです。

Wikimedia commons /AnnLo
 某資料では車体番号は25015とされ、その番号からアルケット社製のB型となりますが、操縦手用クラッペの形状から増加試作型のc型と識別でき、車体前部には増加装甲板が取り付けられています。また、砲塔の車長用ハッチは他の現存車両3両がキューポラに改修されたものであるのに対し、この車両は改修前の両開き式ハッチなので大変貴重です。
 欠損部品は多いものの、基本的にオリジナルの部品のみで復元されているのは研究者にとっては好感が持てます。

⚫︎セルビア(旧ユーゴスラビア)の車体
 ベオグラード(Belgrade)軍事博物館に野外展示されている車体で説明板にはC型と表示されています。
 某資料によると車体番号は23041とのことで、この番号が正しいのであれば、MAN社が製造したA型となります。

Wikimedia commons /Srđan Popović
 野外展示ですが、欠損部品が少なく、良好な状態で保存されています。
 なお、誘導輪や排気管、発煙弾用装甲カバーなどはF型仕様に改修されています。

⚫︎カナダの車体
 カナダ戦争博物館に保存展示されているC型とされる車体で、室内展示で保存状態は良好ですが、鹵獲後に取り付けたと思われる部品や欠損部品が見られます。

Wikimedia commons /Balcer~commonswiki
 グランドパワー2005年11月号では17頁にわたり、ディテール写真が掲載されていたので、参考になります。

⚫︎ドイツの車体
 ムンスター(Munster)戦車博物館に一時的に一般公開されたもので、操縦手用クラッペの形状から増加試作型のc型と識別でき、砲塔が無いものの、車台前部に増加装甲板が無い初期車台であることが確認できます。

  Photo/J.J.Dzingel
 現在は非公開のようで、その存在はあまり知られていません。(
「アハトゥンク・パンツァー第7集」の131ページ上に写真3点が掲載されています。)

⚫︎ベルギーの車体

 ベッカーコレクション(Abdre Becker collection)に砲塔が無いものの、車台前部に増加装甲板が無い初期車体が現存しています。

使用キット
 次の2つのキットを使用しました。
▼Ⅱ号戦車C型 ポーランド戦線(タミヤ(35299)2009年)

 設計がⅡ号戦車の決定版である「PANZER TRACTS No.2-1」の発刊前であった事と、ソミュールの復元車両の誤りに気づかずに設計されたことから、いくつかの修正点はあるものの、大変組みやすいキットです。(2023年時点において生産休止中のため、店頭在庫のみ)
 なお、前キット(35292)で指摘された誘導輪は修正されたパーツが付属しています。
 
▼PzKpfw.Ⅱ Ausf.B (DRAGON(6572)2010年)

 タミヤのキットに対応するように翌年に発売されましたが、開発を急いだためか?起動輪の歯数が実車と異なる、前部牽引フックが省略されているなど修正箇所がいくつか見られます。
模型製作の方針
 タミヤのキット(C型)はA型に改造し、ドラゴンのキットをB型として、それぞれのキットのパーツを比較検証しながら、じっくり製作することにしました。 (続く)

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