考察雑記帳  Study

MG37(t)(Vz.37)重機関銃

38(t)戦車の車載機関銃「MG37(t)」

 38(t)戦車の車載機関銃でもあるVz.37重機関銃(ドイツ名称MG37(t))が、(株)シカゴレジメンタルスさんに無可動実銃の商品として陳列されていたので、同社のご協力を得て取材することができました。
 当時の記録写真では確認できない細部や実物の存在感を存分に味わってください。
  ※同社にこの銃を目的で訪問される場合は、在庫が無い場合がありますので、事前に同社のHP等でご確認ください。

 

■実銃解説
 この機関銃はブルノ兵器廠が開発し、1937年にブルーノZB.Vz.37重機関銃(Zbrojovka Brno vzor 37)としてチェコスロバキア軍により制式採用されました。
 この銃はZB53(Zbrojovka Brno 53)の名称で各国に輸出され、イギリスではバーミンガム・スモール・アームズ社(BSA社)がライセンス契約を結び、1938年に英国陸軍の発注を受けて1939年から量産化し、ベサ(BSA)機関銃として戦車や装甲車に搭載されました。
 1939年3月、チェコスロバキアのドイツへの併合により、この銃はドイツ名称MG37(t)(Maschinengewehr 37(tschechisch))としてドイツ軍が使用することになり、発射速度は550発/分と750発/分の二段階切替、銃口初速750~835m/秒、有効射程3,100~4,500mを有していました。
 また、使用銃弾は7.92×57mmモーゼル弾で、その給弾はベルト式のメタルリンクであったことから、ドイツ軍が使用していたMG34重機関銃の弾帯がそのまま使用できました。
 戦車エースのオットー・カリウスは彼の回顧録の中で「ロシアの埃っぽい風土ではチェコの機関銃はドイツの機関銃(MG34)より信頼性が高い。」と述べていました。

■銃身各部のディテール
▼消炎器(フラッシュハイダー)は発射時における銃口の炎の発生を抑えるもので、38(t)戦車A型では当初装着されていませんでした。


▼銃身前方に付けられた簡易照準器の照星(しょうせい)


▼ネジ山のような冷却フィンを設けた銃身。この凸凹で表面積を増やし加熱した銃身を冷却します。


▼この銃は生産効率が悪いため、車載機関銃としてはMG34への換装が計画されていましたが、実現されませんでした。


▼冷却フィンの断面は真円ではなく、銃身側面は一部切り取られたような形状です。


▼なかなか見られない銃身の底面


■車載機関銃としての仕様と照準孔
 35(t)戦車や38(t)戦車には車体及び砲塔のボールマウント(球状銃架)に装着され、俯仰角度は-10度から+10度、旋回角度は28度で、機関銃用望遠式照準眼鏡(ドイツ名称MG.Z.F.38(t))(Maschinengewehr ielfernrohr 38(tschechisch))は車内から見て機関銃の左側に配置され、倍率2.6倍、視野25度、有効範囲1,700mで、その①照準孔は外部の②軸回転式カバーにより保護されています。
 近距離射撃用として③予備の照準孔が機関銃上部に設けられており、普段は内部で蓋(フタ)がされていました。
 さらに操縦手が車体機関銃を発射できるように操向レバ-に機関銃発射用のワイヤ-式トリガ-があり、使用時には機関銃は車体に固定されていました。

■ボールマウントの照準孔
 現存車両で照準孔を詳しく見てみましょう。

▼照準孔は2箇所に設けられていました。(注:銃はレプリカです)

▲▼①照準孔(望遠式照準眼鏡用) Hole for gun sight
  ②軸回転式照準孔カバー Hole cover
  ③近距離射撃用照準孔(予備用) Hole for gun sight (Spare)

▼②照準孔カバー(開放時)  ② Hole cover open

▲照準器が正面から見て銃の右側に配置されているため、機関銃はボールマウントの中心線より左寄りに設置されていました。

▼②照準孔カバー(閉鎖時) ②Hole cover closed


 模型では、トライスターとドラゴンのキットでは②のカバーが省略されていますので、気になった人は再現してみてください。
 タミヤのキットでは銃口を含め、すべて省略されています。少なくとも開口をお薦めします。(2021.10.22掲載)

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