考察雑記帳  Study

 ドイツ戦車の装備品を考察してみました

尾灯(標準型)の考察  Tail light

 尾灯(テールランプ又はテールライト※)は夜間や濃霧などの悪天候時において後続車両にその存在を知らせて追突を防止するための灯火で、前照灯と連動して点灯します。
 第二次大戦中のドイツ車両に装備されている尾灯は、ブレーキと連動して点灯する制動灯(ストップランプ又はストップライト※)と一体となったものが採用されています。
 この尾灯は装輪車両や戦車などに装備されていましたが、尾灯機能を兼ね備えた車間表示灯の採用により徐々に装備されなくなりました。 ※ライトとランプの表記の違いは一説によるとアメリカ英語とイギリス英語の違いによるものとのことです。
 まずは、その装備例を当時の記録写真で見てください。
▼Ⅰ号戦車B型(#1)
尾灯
▼Ⅱ号戦車A型(#2)
尾灯
▼Ⅲ号戦車F型(#3)
尾灯
▼Ⅳ号戦車A型(#4)
尾灯
 ご覧のとおり、どの車両にも同一規格の尾灯が採用されていることがわかります。
 では、その尾灯の模型でのパーツを見てください。
▼ドラゴン(6230)のH37
尾灯
▼タミヤ(35299)のH2
尾灯
▲記録写真とほぼ同一形状な尾灯が再現されています。
 このサンプルは良い方の例であり、同一の尾灯であっても模型メーカーや車両ごとに微妙に形状が異なっています。
 さて、ここで本題に入ります。
「あなたは尾灯を何色で塗装していますか?」
 白黒の記録写真では色の判断は困難であり、組立説明書を見ても色指定がされていないことが多いようです。
 また、日本の「道路輸送車両法」に基づく保安基準によれば、尾灯と制動灯はいずれも「赤色の灯火」とされており、多くの方も赤色と認識して塗られている事と思います。
 そこで私は「アハトゥンク・パンツァー最終回」(アーマーモデリング誌05年2月号収録)において図示させて紹介させていただいところですが、まだあまり知られていないため、ここで再度紹介するものです。
 一番納得していただけるのは次に紹介する実物の写真(#5)だと思います。
▼1tハーフトラック(#5)
尾灯
▼キューベルワーゲン(#6)
尾灯
▲車両をレストアする際に、紛失している尾灯パーツを補うため、類似品を装着する例が多い中、写真の車両では類似品ではなく、本物の尾灯を取り付けています。実物と類似品の見分けは困難ですが、当時の記録写真を見ていれば、容易に判断できます。
 灯火の色は上部が橙色、下部が赤色ですが、車間表示灯の例で考えれば、橙色の灯火が制動灯で、赤色の灯火が尾灯となるわけです。
 なお、模型のパーツと実物を比較すると灯火部分が模型では凹表現であるのに対して、実物は凸のようです。
▼この凸形状を再現した模型のパーツを探してみました。
尾灯
▲このパーツはタミヤの「ドイツ軽戦車35(t)」(商品番号25112)に含まれているX11のパーツで、「ドイツ初期型ジェリカンセット」(商品番号35)にも同じパーツが含まれています。
▼こちらはドラゴン38(t)戦車系列の車外装備品共通パーツK16です。
尾灯
 これらのパーツを「すごい再現度!」と思っている人は私を含めて極めて少ないと思いますが、この凸形状の塗り分けは凹形状のパーツより面倒そうです。
 今後もこの形状が標準となることを期待したいと思います。
▼次に実物の尾灯の底部(#7)に注目してください。
尾灯
▲白い部分は自動車登録番号標(ナンバープレート)を照らす番号灯で、尾灯と同じバルブが使用されます。ナンバープレートを付けない戦車には不要なものですが、装輪車両のナンバープレート上部に尾灯が設置されているのは、この理由によるものです。
 ちなみに車間表示灯(初期型)の底部にも番号灯が設けられています。
さすがにこの番号灯を1/35スケールの模型で表現することを推奨しませんが、予備知識として覚えておいても損は無いと思います。

【出典】
著作権法第32条第1項に基づき、出所を明記して引用しました。 
#1."PANZER TRACTS No.1-1"p.1-83 
#2."PANZER TRACTS No.2-1"p.2-1-16(D651/1)
#3."PANZER TRACTS No.3-2"p.3-2-21 
#4."PANZER TRACTS No.4"p.4-16(The Tank Museum)
#5,#7. Alan Ranger「Prime Portal」 "Demag-D7 Sd.Kfz.10 Walk Around Page 1 
#6.Jochen Vollert "KUBELWAGEN on all Frontlines"(tankograd Publising)p.60

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