ドイツ車両の装備品を考察してみました
ご紹介するのは「3トン・ジャッキ」で、シカゴレジメンタルス大阪ショールームにて展示販売されている商品を同社のご厚意により取材させていただいたものです。
▼ジャッキは重量物を持ち上げる機械装置で、戦車では転輪などを交換するために用いられています。「3トン」とは最大使用荷重を示し、このジャッキは最大3トン(3,000kg)まで持ち上げられるという意味です。
▼この3トン・ジャッキは記録写真からドイツ軍の「ヘンシェル・タイプ33」などの3トン・トラックに積載されていたものと思われますが、Ⅰ号戦車やⅡ号戦車に搭載されていた2トン・ジャッキに外観がよく似ています。
第二次世界大戦中のドイツ軍の車載用ジャッキは油圧式ではなく、歯数の違う歯車を組み合わせることにより「テコの原理」で重い車体を持ち上げる構造のもので、①は歯車の逆転防止用のストッパーで、任意の位置で歯車を固定するものです。
▼ストッパー①による歯車解除状態
▼ストッパー①による歯車固定状態
▼クランク・ハンドルの柄の部分②は木製であり、持ちやすい曲線形状に加工されています。ちなみに、他の大型ジャッキでは柄の部分がただの鉄パイプになっていました。
▼この直線歯車はラック③と呼ばれ、クランク・ハンドルを手動回転することでラックが少しずつ上昇します。このラックの先端には受金(作用点)④があり、これはジャッキアップのために車体にあてがう部品で、2トン・ジャッキと同じ形状をしています。
▼この受金④はどの角度でも車体に当てることができるように360度回転し、2つの突起部分には滑り止め防止の溝が刻まれています。
▼ラックの後端にも受金(作用点)⑤があり、こちらは低い位置で当てることができます。
▼接地部分(支点)⑥は2トン・ジャッキとは異なり、5トン以上のジャッキと同じ形状で横滑り防止のための爪が四隅に付いています。
▼本体塗装はダークイエローのように見え、シカゴレジメンタルスの情報によれば、入手先は北アフリカとのことであることから当時の色かもしれません。 また、塗料が剥がれた部分にはジャーマングレーらしい色も確認できます。
モデラー目線としては塗装の剥がれ具合が塗装の参考になるかと思います。
キットの組立説明書の中にはジャッキをメタリックグレーで色指定しているものもありますが、記録写真から判断すると車体色と同色というのが一般的だと考えられます。しかし、ラック部分は金属色に塗装するのが、よろしいかと思います。
ジャッキの製造会社はPaff社(現在Pfaff-silberblau Hebezeugfabrik Gmb & Co.)で、現在もクレーンやウィンチ、ジャッキなどのリフティング装置を製造しています。
このジャッキは商品なので、どなたでも購入することもできますので、興味のある方はシカゴレジメンタルスのHPをご確認ください。(2014.9.23掲載)