自走榴弾砲 ヴェスペ 
"Wespe" GeschuetzwagenⅡ
fuer 10.5cm le.F.H.18/2(Sf.)
製作(14)  Model making(14)
戦闘室左側 Left side of Fighting compartment
 戦闘室左側の再現については、アハパン連載時の内容とは特に大きな違いはありませんが、各装備ごとに紹介します。
▼タミヤのリニューアルキット

▲旧キットで省略されていた車内通話装置(E12)と信号弾収納ケース(E13)のパーツが追加されています。(いずれもグレーのパーツ)
▼各パーツを側板に仮止めした作例

▲アンテナ線などの配線は未取付です。
①アンテナ基部 Antenna mount
▼キットでは天板と一体成形されているため実感に乏しいと感じたので、ディテールアップすることにしました。

 実車では4枚のフィンが付いた"Antennenfuß 2"が付けられていたようで、ドイツとフランスの現存車両にそれが残されていることからも分かります。
▼これを再現すべく、使えそうなパーツを比較してみました。

はバッションモデルズの「1.4Mアンテナセット」(P35-167)のパーツで、3Dプリンター製品です。はボイジャーモデルのエッチングパーツに付属しているもので、作例ではこちらを使用し、0.3mm径の真鍮線で補強しています。
●予備アンテナ Spare antenna
 現存車両には2本の予備アンテナを装着する金具が残されています。また、搭載している無線機に対応しているアンテナは1.4m又は2mのいずれかとされており、この狭い車内に2mアンテナを収納することが困難であることから、1.4mロッドアンテナが装備されていたようです。
▼作例で使用したのはバッションモデルズの「1.4Mアンテナセット」(P35-167)の真鍮製パーツです。また、その取付部は3Dプリンター出力品で、アンテナ基部と一体成形されていたので移植し、固定用の蝶ネジは在庫のエッチングパーツを用いました。

②③接続ボックス Junction box
▼アンテナケ-ブルを繋ぐ2個の接続ボックス(②Kst.Pz.Nr.2bと③Kst.Pz.Nr.9a)はキットの側板パーツ(D19)に一体成形されていますが、作例では側板パーツを薄くするため切り取ったので、1120プロダクツの「German Radio FuSprach a/d,f」(Z-02)に付属するパーツを使用しました。

●アンテナケーブル Antenna cable
 2個の接続ボックスを繋ぐアンテナケーブルはドイツ軍の車載無線機資料のバイブルである「Die deutschen Funknachrichtenanlagen bis 1945 Band3」(Hans-Joachim Ellipsen 1991年刊)によると太さ12mm長さ1.5mの専用のものが用意されていたと記載されています。

 しかし、ヴェスペにはこのアンテナケーブルは長すぎるため、途中で二つ折りにして取り付けられていました。ドイツの現存車両ではアメリカから返還された当時は、そのままの状態で取り付けられていることが記録に残されていますが、レストア時に別の場所に移設されており、考証的に問題があるので注意する必要があります。
▼作例ではアンテナケーブルを0.2mm径の銅線()、ケーブル保護用の金属パイプを外径0.5mm径・内径0.2mm径の真鍮パイプ()、蛇腹状の保護パイプをコトブキヤのスプリングユニット0.5mm径(MS-01)()で再現し、側板の留め金具は在庫のエッチングパーツを利用しました。

④信号弾収納ケース Light and signal rounds
 信号弾や照明弾12発(アハパン記載の8発は誤り)を収納したケースで、現存車両では失われていますが、他の自走砲と共通なので参考になります。
▼タミヤのリニューアルキットでは追加されていますが、上面写真などから照合した結果、奥行が足りないと感じたので1mm厚プラ板にてボリームアップしました。また、フタの留め具は、これまではエッチングパーツを用いていましたが、立体感に乏しいと感じていたので、今回はマウスモデラーの「OVMクランブ 後期型」(mv35-002)に付属しているパーツを取り付けました。

▼塗装後、パッションモデルズの「ヴェスペデカールセット」(P35D-006)のデカールを貼りました。

▲塗装によってマウスモデラーの立体感があるパーツが際だって見えるようになりました。
 なお、実車ではこのケースの横には信号拳銃(ホルスター入り)が取り付けられていましたが、作例では省略しています。
⑤MP38/40用マカジン収納パウチ  Magazin poch for MP38/40
 現存車両ではフックが残されており、実車マニュアルの写真ではMG34用の弾帯袋が写っていますが、私は他の自走砲の例からMP38/40用マガジン(弾倉)を収納した車載用パウチだと推定してしました。(詳細は考察雑記帳の「MP38/40マガジン用パウチの考察」)
Fはボイジャーモデルのエッチングパーツで、GはK59プロダクツの「Marder3 ausf.H」(C-013)に付属しているパーツです。

▲作例では再現性に優れていると思われるGのパーツを使用しました。
▼未だに愛用しているパクトラタミヤのカーキで塗装しました。

⑥無線機用品収納ケース  Storage bin for radio equipment
 マイクやヘッドフォンなどを収納するケースで、作例ではキットのパーツを用い、フタの留め具は信号弾収納ケースと同様にマウスモデラーのパーツを取り付けました。

▼塗装後、パッションモデルズの「ヴェスペデカールセット」(P35D-006)のデカールを貼りました。

●電源コード Power cord
 実車では機関室内のバッテリーから引き込まれ、無線機用の変圧器や照明用?のコンセント(照明用ライト等)に電気を供給していました。
▼作例では銅線で再現しましたが、完成後はほとんど見えなくなりました。

⑦車載無線機  Redio
 本車の車載無線機は無線通話装置f型(Funksprechgerät f)とされ、通信と受信機能を兼ね備えています。
 この無線機はf型の他に2種類あり、a型は周波数帯が24.11から25.01MHzでSd.Kfz.222などの装甲車に搭載
d型は周波数帯が23.10から24.01MHzでマーダーやナースホルンなどの対戦車自走砲に搭載、そしてf型は周波数帯が19.9975MHzから21.4725MHzでヴェスペやフンメルなどの自走榴弾砲に搭載され、用途に応じて周波数帯が割り当てられていました。
 さて、この無線機の考察については懐かしい思い出があります。1996年にタミヤからヴェスペのキットが発売されたことから、連載中だった「アハトゥンク・パンツァー」で同車の解説を編集担当者から急遽依頼されました。しかし、当時は車載無線機に関して模型製作の参考になる資料が皆無で、インターネット検索が始まったばかりの時代でした。(Google 登場は1997年)  そこで、ドイツ人のプロモデラーで、最近はNUTS & BOLTSを執筆されているHarald Fitz 氏などに協力を求め、無線機に関する資料を買い求めて記事をまとめ、モデルグラフックス1996年6月号にて発表することができました。たった2頁の掲載でしたが、モデラーのための車載無線機に関する唯一の資料が誕生し、その後、マーダーⅡ、Ⅲの無線機の解説記事に引き継がれていきました。(閑話休題)
▼無線機パーツは当初からキットに含まれていましたが、各社のパーツを比較してみました。

はタミヤで防振ラックと一体成形されています。はボイジャーモデルのエッチングパーツに含まれているレジン製パーツ(スミ入れしてモールド強調)で一回り小さいようです。は1120プロダクツの「German Radio FuSprach a/d,f」(Z-02)のレジン製パーツで、説明書でははf型、はa/d型と記載されています。
 アハパンでは、この無線機を外観上の特徴で区分してきましたが、現存するこの無線機の写真が数多くネットで見られるようになってきてから、外観はあまり関係ないことがわかってきました。
 そこで作例では初期型ではを、後期型ではを使用しました。
▼無線機用の防振ラックはボイジャーモデルのエッチングパーツを用いましたが、1120プロダクツの無線機パーツのサイズに合わせるために手を加えています。

⑧変圧器 Transformer
 バッテリーから供給される12ボルト電気を無線機に適合した電圧に昇圧するための機器で、無線通話装置f型のために設計されたSEUa(Sender/Empfänger-Umformer a)が装備されています。
▼キットではこのパーツが省略されているので、各社パーツを比較しました。

はボイジャーモデルのエッチングパーツに含まれているレジン製パーツで実物とは異なります。は1120プロダクツの「German Radio FuSprach a/d,f」(Z-02)のレジン製パーツで忠実に再現されているので、作例ではこのパーツを用いました。
▼塗装後、パッションモデルズの「ヴェスペデカールセット」(P35D-006)のデカール(メーター、注意書きの赤文字「Feind hört mit !(敵が聴いているぞ!)」、変圧器の銘板)を貼ることで精密感を増すことができました。

▲初期型と後期型では色を変えて差別化を図りましたが、この時点ではコードは取り付けていません。
⑨車内通話装置 Intercom
 戦闘室から隔離された操縦手と連絡を取り合うための車内通話装置(Bordsprechverstärker)です。
▼リニューアルキットで追加されたパーツですが、各社のパーツを比較してみました。

 Nはタミヤのパーツ(E12)、Oは1120プロダクツの「German Radio FuSprach a/d,f」(Z-02)のレジン製パーツで、共に23a型車内通話装置(Kst.Pz.Nr.23a)を再現しているようです。また、Pはボイジャーモデルのエッチングパーツに含まれているレジン製パーツ、Qは前述の1120プロダクツのパーツで、こちら2つは23型車内通話装置(Kst.Pz.Nr.23)を再現しています。本車では23a型又は23型のいずれかが搭載され、23a型は12Vの電気を230Vに昇圧する増幅器を内蔵しているのが特徴です。
▼作例では23型を選択し、コードを取り付け、初期型と後期型では色を変えて塗装しました。

▲細いコードはポリウレタン被覆の0.2ミリ径の銅線、太い電源コードはモデルファクトリーヒロの「カラーチューブ(ブラック)外径0.4ミリ・内径0.2ミリ」(P-961)に0.2ミリ径の銅線を通して使用しています。

 各パーツを戦闘室側板に取り付けて完成です。(アンテナ基部は未取付)
▼塗装後(初期型)

▲ドイツの現存車両を参考に再現していますが、各装備品が隙間無く装着されていることが理解できると思います。なお、壁面には実車マニュアルを参考にしてパッションモデルズの「ヴェスペデカールセット」(P35D-006)の換算表デカールを貼ってみました。なお、1.4mのスペアアンテナが戦闘室側壁一杯で、2mアンテナは装着できないことがわかります。
▼塗装後(後期型)

▲フランスの現存車両を参考に再現し、アンテナケーブルの装着位置を下げた状態にしてみました。無線機に接続するコードは用途によって太さを変えたことで実感を高めています。(続く)

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